29日(火)アテネ・フランセ文化センターで
サイレント映画の傑作『
裁かるるジャンヌ』を久しぶりに観、かつ新たに
聞いた。聞いた、とは、
柳下美恵さんのオリジナル・ピアノ曲の演奏付き上映だったのだ。映像と音楽の、感動的な相乗効果だった。
舞台を望遠鏡で覗いているような顔、顔、顔の連続、そこに滲み出る人間の本性。その本性を神に裁かれているのは、ジャンヌ・ダルクを裁いているつもりの実は審問官達の方なのだろう。
息詰まる
顔のドラマの合間に、人間達の動きが
怪しい磁場の中の流れのように捉えられる無気味なカメラワーク。
無声映画の極北にあるこんな映像に曲をつけるのは至難の技だが、柳下さんは、映像の醍醐味を損なうことなく、静けさと激しさの絶妙なバランスを取りつつ、
映画の空気を音に表現していた。そして
無音になるタイミングのすばらしさ。音をつけるだけが作曲ではない。時には
音をつけないことも、また作曲と言えるだろう。
先だって朗読会で、柳下さんのCD『
Sound of Silent』をバックに俳句を詠ませていただいた。客席にいらした柳下さんに、朗読後「
今度、生演奏で」とおっしゃっていただき、
来年共演の折は、皆さん、いらしてくださいね。柳下さんの近々のイベントもお聞き逃しなく!