北京オリンピック開会式前日、
万里の長城で
聖火リレーが行われた。
チベット問題などにより、
各国で物議を醸した聖火リレー。開会式では、最後
どのように聖火台に点火されるだろうか?「
鳥の巣」と呼ばれる
スタジアムだけに、
燃える鳳凰がはばたくだろうか?
期待と同時に
不安も多い霧の中、
龍の姿の長城を聖火が運ばれる映像を見て、「
読売文学賞」受賞者で
日中友好使節団団長も務めた故
野澤節子作の次の俳句を思い返した。
枯寄する 長城万里 命惜し
野澤節子は
不治の病と言われた
脊椎カリエスで
10代~30代初めまでを
病床に過ごし、
医学の進歩もあり
奇跡的に歩けるようになった。
命に対する思いは人一倍あって、「命惜し」などという表現を
徒には使わない。
北方民族の侵攻を防ぐために築かれた長城も、
北から寄せる冬、つまり「枯れ」、
死は止められない。
思いは万里続くとも。
大学時代、野澤節子の句に
魅せられ、原稿を送って以来、彼女が亡くなるまで10数年お世話になった。僕が
唯一直接指導をいただいた俳句の
師だ。「
最年少の弟子」として、「
婦人画報」などの雑誌に一緒の写真を載せていただいたり、
中華街でご馳走になったりした。
葬儀の折には、「竹浪君が
最後の弟子になったね」と言われた。
野澤先生逝去の翌年までの僕の句をまとめた句集『
楽想』の
帯に、先生が生前、俳誌に書いてくださった言葉を掲載していますので、
HP同本のページをご覧くださると幸いです。
タモリこと
森田一義さんが、
赤塚不二夫さんへの
真心溢れる弔辞の最後に、
涙声で「ありがとうございました。私も先生の
数多くの作品のひとつです」と述べられた。僕は野澤先生の
不肖の弟子だが、
神宮外苑の花火(上の写真)を見ながら、先生にお礼を言った。
俳句×写真集『
恐竜×ヴィーナス=17文字
』(
HP)収録の次の句は、師の上記の句と
同じ大陸も舞台とし、
太平洋戦争後
シベリア抑留を経験して
帰還した叔父がモデル。
シベリアを 生き延び小春の 日に逝けり