
今月初め、
愛知万博で人気を博した「
サツキとメイの家」が愛知県に正式に譲渡され、万博跡地公園にそのまま残されることになった。
左は愛知万博で僕が最も好きだったパビリオン、
イタリア館の目玉「
踊るサテュロス像」のレプリカの方で、1998年(20世紀最後の大発見)に
シチリア沖で引き揚げられた様子を再現している。ブロンズの本物は館内特設ドームの中に置かれ、全天が時に地中海ブルー、時に闇となって
シルエットが浮かび上がる鮮やかな展示だった。
日本初のエキスポ、1970年の
大阪万博の会場を未来都市としてロケ地に計画していた名画がある。敬愛する
タルコフスキーの『
惑星ソラリス』。だが当時の
ソヴィエトでは何事にも当局の許可が必要で、60年代から再三申請していたにも拘わらず結局認可されないまま万博は終了してしまう。そのもどかしい経緯、読むも切ない彼の心情が「
タルコフスキー日記」に綴られている。
未来都市は代わりに東京の
首都高で撮影され、その後の近未来物におけるアジアンムードの先駆けともなったが、もしかすると千里の万博公園に今も立つ「
太陽の塔」がソラリスに登場していたかも知れないのだ。そう思うと哀愁が深まる。
再び日本で開かれた万博、心に作用する
ソラリスの海に、サテュロス像が浮かび上がる。