友人の映像ディレクター・小林一君からのご指名を頂きまして、1日1本、7日間に渡って映画を挙けるFBの「映画チャレンジ」に参加させて頂きます。「映画チャレンジ」とは映画文化の普及に貢献するためのチャレンジで、#savethecinema に関連するものです。 1本目はフェデリコ・フェリーニ監督の 『
8 1/2』です。

私はフェリーニの自伝的作品『
アマルコルド』の舞台リミニに、フェデリコ&ジュリエッタそして二人の赤ちゃんが共に眠る墓に手を合わせに行ったファンで、Blogのハンドルネームも『La Dolce Vtia 1/2』としているが、この「映画チャレンジ」企画のバトンを渡してくれた小林君が『
甘い生活(ラ・ドルチェ・ヴィータ)』を最初に取り上げていたので、ここでは『81/2』について綴ることにする。両者は姉妹作とも言え、カンヌ映画祭グランプリ受賞の前者で作家志望のジャーナリストを演じた主演のマルチェッロが、アカデミー外国語映画賞受賞の後者では行き詰まった映画監督・主人公のグイド役を、また甘い生活の満たされず自分の気持ちをも裏切る恋人役アヌーク・エメが、グイドの満たされず裏切られる妻を演じている。つまり前作が「夢の前」、次作が「夢の後」という構図だ。
フェリーニの長編8本+½(短編)本目に当たるこの映画は、創造の伴侶と呼ぶべきニノ・ロータの音楽とのコラボがいよいよオペラの域にも達し、幻想と現実、喜劇と悲劇が混沌と展開する。フェリーニ作品ほどラストシーンからエンドロールまでがまさに「圧巻」な映画はないが、『81/2』では、行方も知れない幻のロケットのもと皆が輪になって踊る大団円から、グイド少年が一人吹き残る笛のひと節、さらにスクリーンも暗くなって流れるテーマに続くヴォカリーズと、ASANISIMASAは揺さぶられ続ける。「アサニシマサ」とはグイドが幼年期に教えられた魔法の言葉で、サ行を抜くとアニマ=魂となる。
フェリーニが「『サテリコン』はあともう一歩の所まで行った」と言って再び古典に挑んだ『カサノヴァ』の公開当時、「グイドが創りたかった映画がこれだ」という評に共感したものだが、グイド監督の未完の大作を象徴する途方もないロケット発射台に結ばれた数枚の吹き流しが風に漂う叙情的な虚無感もまた圧巻だった。
映画中盤のハイライト、同級生の父親(グイドの友)と不倫を果たした若い女の詩的な呟きの最後の一言、「サイレント」の直後に始まる賑やかな夜の余興で、初老の芸人が指先で操り、客人達の財布の中から頭の中まで正確に読み取り舞台のやはり初老の淑女へテレパシーを送るタクトが迫ると、先の娘は狂ったように暴れ、心を読まれることを拒絶する。そしてこの危機から解放された彼女が、「しーっ」と唇の前に立てた指をこちらに向けると、私にはその指も魔法のタクトに見えた。芸人の手の方はその後、グイドのASANISIMASAに繋がる思い出の扉を開く。
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